ポリイミドフィルムに直接銅めっき

新技術研究所では昨年度、産総研と5G用低損失基板に向けた高強度異種材料接合技術を共同開発。その成果をさらに推し進めCB技術を用いてFPC(フレキシブルプリント基板)の基材として、絶縁材としてのポリイミドフィルム(PI)を、導電材となる銅箔に直接めっきした場合の接合強度を確認した結果を以下に示します。

1. CB技術を用いたポリイミドへのめっき手順

湿式めっき法において、従来技術に比べてこのように簡便で、使い易いプロセスにて高い引き剥がし強度を得ることが出来ます。

とりわけ基材とめっき層を接合するCB化合物層はナノオーダー(10nm以下:下段にSEM画像あり)であり、スマートフォンやウェアラブル端末などの軽薄短小化にも貢献いたします。

なお今回使用したポリイミドフィルムには以下のように面によって表面粗さに違いがあるため、それぞれの面での接合強度を測定しました。

2.銅めっきの引き剥がし強度

1)CB化合物αを用いた場合にA面、B面両面ともに7N/cm以上の引き剥がし強度を得た。

2)いずれの化合物においても、A面、すなわち表面粗度の小さい方が引き剥がし強度が高いという結果が得られた。

これらの結果から、CB化合物を適切に選定することで、十分な接合強度が期待できます。また、CB技術の接合メカニズムは、接着剤のように表面の凹凸を用いたアンカー効果に依らず化学的に接合するため、このようにより平滑な面において優れた接合強度を得られる可能性があります。

3.銅めっき層のSEM観察

このように基材とめっき層を接合するCB化合物層はナノオーダー(10nm以下)であり、スマートフォンやウェアラブル端末などの軽薄短小化にも貢献いたします。

 

4. CB技術による接合メリット

・引き剥がし強度 7N/cm以上と高い密着性を実現

・CB化合物層の厚さはnmオーダーであり、接合層を極薄化

・基材の平滑性を維持(粗面化が不要=伝送損失抑制、高精細化が容易に)

・簡便なプロセスによりコスト低減にも期待

 

5. ポリイミドフィルム上へのメタライジング

フレキシブルプリント基板(FPC)は、薄く、軽く、柔軟性があり自由に曲げることが出来る配線基板で、スマートフォン、タブレット、ノートPCなどの様々な電子機器に使用されている。これらの機器には、最新のプロセッサ、大容量メモリ、無線モジュール、センサー、高画質カメラモジュールなどが狭い空間に密に配置されており、わずかな空間に立体的に配線できるFPCの役割は大きい。

FPCは絶縁層として、液晶ポリマー(LCP)、オレフィン系のCOP、フッ素樹脂フィルムなどが注目されているが、様々な理由でFPCへの適用に限界があり、ポリイミドフィルム(PI)が広く利用されている。

PIと導電層の銅箔を貼り合わせた銅張積層板には、熱可塑性PIを接着層としたラミネート材、銅箔上にPI前駆体ワニスを塗布して硬化させたキャスト材、スパッタリング法によりPI表面にNiCr、Cuシード層を形成し、電解銅めっきしたメタライズ材がある。

現在主流のラミネート材、キャスト材は、密着力を得るために粗化銅箔を使用するため、積層界面の凹凸が回路の精細化や、伝送損失低減を困難にしている。

メタライズ材は、積層界面が平滑であるので高精細化には有利であるが、銅がPI内部に拡散するのを防ぐNiCr層をスパッタリングで形成しなければならず、高コストであるのが弱点で、用途が限定されている。

スパッタリングによるシード層形成に代わる安価なメタライズ法として、無電解Niめっき法が提案されている。

PI表面に無電解めっき層を形成するには、無電解めっき開始触媒の金属パラジウム(Pd)粒子を担持させる必要がある。このため、前もってPI表面をクロム酸や過マンガン酸などの酸化剤、UV照射やプラズマ処理などによって親水性を付与しなければならない。PIは、分子構造の特徴から、水酸化カリウム、アミン類、アルコール類からなるアルカリ性溶液に浸漬し、イミド構造を改質することにより親水化できるので、この方法を利用した多くの無電解めっき法が提案されている。

メタライズ材の要求性能として、銅膜厚が8〜9μmの時に、150℃×168時間の熱負荷後の90°引き剝がし強度が0.4kN/m以上を求められている。しかし、従来の方法では、初期の密着強度は高いものの、熱負荷後には大幅な強度低下を生じるのに対して、いくつかの改善方法が提案されている。

アルカリ改質によって形成されるアニオン性官能基と相互作用が可能なカチオン性末端基を有するPd(II)アミノ錯体が、無電解Niめっきの触媒として効果的であるとの提案がある。

無電解めっき触媒の改善とは異なり、PI表面の改質の提案もある。例えば、PIに酸素プラズマ処理して親水化し、そこにSAM(Self-Assembled Monomer)を付加する方法である。SAM剤として、3-アミノプロピル-トリエトキシシランが提案されている。

また、PI基材上に高分子接着層を設け、銀ナノインクを印刷し、めっきして銅配線を直接形成する提案もある。

以上のように、PIのめっき法については多様な手法が提案されているが、要求される性能の高度化に対応して、常に新たな手法が求められている。

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